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〈長崎刑務所(B指標)で学んだ刑務所について〉

  • kofujimoto
  • 2017年10月8日
  • 読了時間: 4分

刑務所。 そう聞くと、怖い人たちのいるところ、と思いがちだ。 隣の部屋に「刑務所から出てきた人」が引っ越してきたらどうだろうか? 子どもを外に出せない、出るとき細心の注意を払って。 でも、その人が「どのような犯罪者」なのかを知らずに「犯罪者」と1グループにまとめるのはいささか差別的ではないだろうか?

昨日長崎刑務所へ行ってきた。 この刑務所は犯罪者の入所回数が平均5回、期間が平均2年10ヶ月というところだ。 平均が5回ということで再犯率が高いが、期間は3年ほどである。 要するに、軽度な犯罪を繰り返す人が多い。 罪としては、覚せい剤と窃盗が75%を占める。 刑務所に滞在した2時間のうち、30分施設説明、30分施設見学、1時間質疑応答をした。 説明で上記のことを教えていただいた。

見学は、同時に開けるとアラームの鳴る扉を通り共同室と単独室へと向かった。 独房という呼び方が聞き慣れていたが、監獄法の改正により今はそのような呼び方はしないらしい。 平成18年、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律、という長い名前には変わったそうだ。 その中で受刑者の人権が保たれることとなった。 共同室にも単独室にも洗面台やトイレ、テレビ、本、アヤシイ本もあり、刑務所という感じよりかは集団寮のような印象を受けた。 もちろん、外から見えやすくなっていることと、狭い食事用の入り口があること、外から電気とコンセントを切られると一切の電化製品が使えなくなることなど不自由はある。 しかし、一人暮らしの見学者の中からは「うちの家より豪華やん!」という声も上がった。 話には聞いていたが家を持たない方が刑務所を居心地いいという理由がよくわかった。

刑務所は刑期を終えるまでじっと部屋で過ごすというわけではない。 作業の義務があり、1日4×2の8時間勤務となっている。 この8時間で各々の能力に合わせて割り当てられた仕事をこなす。 木工、洋裁、炊事、洗濯、営繕などだ。 その中で木工と洋裁を見せていただいた。 部屋に入ると、作業をしている受刑者の「報告!こちらA班!総員14名、現在員14名!異常ありません!」という声が響いた。 詳細な数や語句は覚えていないが、このようなセリフだ。 これは体育の授業でも言うような一般的な言葉だが、やや高齢の受刑者がキリッとした振る舞いで敬礼をしていたのを見て驚きを隠せなかった。 B班でも同じピシッとした報告があったが、どことなく内気な人だろうなという雰囲気があった。 良い環境ではあるが、指導は徹底されているということを思わせられた。

講堂と呼ばれる体育館では何人かで分かれて運動や囲碁、爪切りをしていた。 この時間は話すのが自由だ。 そして服装も比較的自由で上は肌着になることも許される。 受刑者同士がくだけた表情で話し合っており和やかな雰囲気だった。 受刑者同士は呼び方を強制されずあだ名で呼び合うことも多いらしい。 刑務官は苗字にさん付けや必要に応じては敬称なしとなっているが、囚人番号で呼ぶというイメージとは違ったことが衝撃的だった。 「あれはドラマとか漫画の世界だけで、現実ではあんなことはありません。」ということだ。

我が長崎多職種連携・たまごの会メンバーや他の大学生、定着の方(出所者の地域生活定着支援、すなわち社会復帰を助ける)を含めて20名ほどで回ったが、3人の刑務官に常に付いていただき詳しい説明をしてもらい質問もできた。 そのおかげで刑務所に対して理解がとても深まった。 たまごの会で、第2回刑務所見学をしたいという話も上がっておりまた行きたいと思った。

さて、帰りはなんだか異世界にいる気分が続いていた。 言うほど異世界ではないということを身に染みてわかったはずなのに。 そのときの気持ちは刑務所に行ってみないとわからないものだと思う。

この刑務所はB指標(繰り返し刑務所に入っている人)と呼ばれる人たちが主で覚せい剤や窃盗が多いと書いたが、簡単に言うとヤクザと衝動的な安い商品の万引き、食い逃げなどだ。 知ってみれば大したことはない。 長崎刑務所から出所した人が隣の部屋に住んでいても(出所者が一般のマンションに住むことはあまりないが)命の危険を恐れる必要はないのだ。 しかし、他の刑務所ではL指標(刑期が10年を越え長い人)が主な刑務所があるということも知った。 「〇〇刑務所から出所してきました」と言われたとき、今までは(怖いけど、罪にもよるし元犯罪者だからと言って差別してしまうのはよくない)と思えたかもしれない。 でも今は刑務所の名前で自分に切迫した危険があるかどうかわかってしまう。 知れば差別はなくなるとよく聞くが、果たしてそうだろうか? 知れば知るほど差別が大きくなってしまうのではないか? しかし、危険性があるものを怖がるのは動物の本能であり重要な要素だからそれは適切なことなのだろうか? 長崎刑務所は大きな疑問を残してその門を閉じた。

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