〈選択肢を増やすということ〉
- kofujimoto
- 2017年9月15日
- 読了時間: 5分
東京へ行って、聴覚障がいのある方とのお話や、企業の方とのお話、漢方や鍼灸、耳鼻咽喉科外来、そして旧交を温めたり。
そのようなたくさん詰まった1週間を文字で表せるわけもないので抜粋して書く。
《障がいのある方への選択肢》
聴覚障がいというものは現在の医学で治るものが多い。
補聴器や人工内耳の普及により健聴者と同じような生活が送れるのだ。
ただ、精密機械であるがゆえ衝撃にも水にも弱く、いくら技術が進歩したとはいえまだマイナスポイントが残っている。
医療ではそのマイナスポイントを減らすことを第一に考えている気がする。
患者さんが障がい者として生きていくことを支援するという選択肢を忘れている人が多いのではないか。
障がい者の世界というのはそれはそれで居心地がいい。
無理に健常者にされると生きにくくなる。
僕は色覚障がいがあり色覚障がい者が健常者になれるというメガネをかけたが、今までの色の概念が通じなくなる絶望感を味わった。
医療の力の限りを尽くすのではなくあえて何もしないという選択肢を提示してもらえることがどれだけうれしいことか。
聴覚障がいのある方だと気付くとすぐ、筆談しましょう、と言われるのがいやだと言う。
僕はそれをきいて親切なことに思え、理由が思い当たらなかった。
しかし、読唇術(唇の動きから言葉を読み取ること)を使える人からすると筆談は時間がかかって仕方がない。
口話(読唇術などを用いる)・筆談・手話 どれがいい? というように選択肢を与えてもらえるのが一番助かる。
障がいがあるから特別支援学校や盲ろう学校というのは短絡的すぎる。
いくら口話が不可能に思えるような人でも訓練でできるようになるという可能性があるということを感じさせられた。
《企業の方との対談》
Facebookを通して知り合った方とお話をすることができた。
今僕が属する 「長崎多職種連携 たまごの会」 の普及法についてインターネットに詳しい方からのアドバイスが欲しかったことと、障がい×工学の話をしたかった。
たまごの会はどうしても曖昧になりがちであるためそれを整理してわかりやすく紹介できなければならないため今後調整をしていく。
障がい×工学の話は工学やインターネットの考え方をきいたことで大きく考えが膨らんだ。
形にしていくためにもっと練っていきたい。
最も印象に残ったことは、「あなたを突き動かすものはなに?」と訊かれたことだ。
僕は間髪入れずに「好奇心です。」と応えた。
考えたわけでもないが、無意識のうちに応えたのだからやはり僕を動かすのは好奇心なのだろう。
たしかに、患者さんのために良い医療を提供したいという使命感や、医者としての責任感もあるだろう。
でも、やっぱり中核は好奇心だと改めて思った。
もっと知りたい、もっと学びたい。
まさに大好きなスティーブ・ジョブズがスタンフォード大学で講演したあの言葉だ。
Stay hungry Stay foolish
《東洋医学を通してヒトを見る》
漢方や整体に救われたという経験がある人は多いだろう。
その中の1人であるため僕も東洋医学の力に興味があった。
わざわざ僕のために設けていただいたセミナーということで一段と気分が盛り上がった。
漢方は心身一如(しんしんいちにょ : 心と体は繋がっている)ということを重視する。
当たり前ではないかと笑ってしまうようなことだが、今の医学界でこの認識があればパソコンに向かっていて患者さんを見ない医者が出てくることなどないだろう。
漢方は西洋医学とアプローチが違い原因不明や治せない病気を治せることがある。
患者さんの心の叫びに耳を傾けることができるからだ。
先人たちは自らの手や頭を駆使して患者さんを見てきた。
機械を通してでは聞こえない患者さんの声が触診でわかるからだ。
このような昔の人の医道(医者としての道)を手本にすればもっと医療の質を高めることができるのではないだろうか。
鍼灸で重要なのは俗に言う ツボ だ。
専門用語で経穴と呼ばれるツボに処置をすることで体を調整できるのだ。
そのために東洋医学独自の考え方が必要で、その入り口として 気 血 津液 精 という考えを習った。
「気」 ときくとなにやらスピリチュアルな気がしてしまうが、エネルギーのことだ。
この「気がする」ということも目には見えないものであるが、目には見えない重要なものも多い。
血 津液 精 に関しては省くが、この後長崎へ帰って 気血水 陽陰 五行説 などの考えを学んだ。
奥が深く、納得のいく概念に引き込まれることは間違いないだろう。
漢字が多いということと、西洋医学と違うということだけで詳しく習わない今の風潮が変わればいいのになと思った。
《〝心療耳鼻科〟で見た精神の病》
耳鼻咽喉科に来る患者さんは身体的にはなんでもない人もいるということからDoctors' Styleの正木先生は〝心療耳鼻科〟と呼ぶ。
そういう場合は精神的な問題が耳や鼻に出ているだけなのだ。
そのため原因不明・治療不可とされるものが話を聞くことや漢方で治ることがある。
そのようなアプローチを目の前で見て、〝心療耳鼻科〟が少しわかった気がする。
耳や鼻を治療しておしまいにする対症療法ではなく、根本的なところから解決する原因療法の目線があるだけで大きな成果を上げることができる。
心を診る分野は精神科だけではないということを改めて思わせられる。
《まとめ》
会いたかった先生や学生、友人に会えて色々感じた。
その中で今回学んだことを簡単にまとめると全て「選択肢がたくさんある」ということで共通する。
正木先生のDoctors' Styleは 今回の聴覚障がいの方とのお話と、東洋医学セミナー、耳鼻咽喉科の外来見学に関わる。
他にも医者の人生について考える多種多様なイベントが行われる。
医者として生きることにたくさんの選択肢があるということを改めて考えさせられる。
ただ勉強ばかりしているだけがいいわけではない。
様々な経験を積んで医師になり、大人になる。
人生どのような選択肢を選ぶかは思ったよりも開けているのかもしれない。
たくさんの選択肢を検討した人ほどたくさんの選択肢を与えることのできる人になるのだから。
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