〈納棺ー解剖の終わり〉
- kofujimoto
- 2017年7月8日
- 読了時間: 3分
医学科の解剖の授業が終わり、今日は納棺をした。
まさにその名の通り、何箇所も離断したご献体さんを棺に納めるのだ。
お葬式で見るようなしっかりした棺桶にふわふわのお布団をかけてご献体さんと組織片を納めるのだ。
そして、遺品も入れたりもする。
このとき、とうとうご献体さんとお別れなのかと実感させられた。
このご献体さんはご遺族の方が面会したあと、火葬場で焼かれご遺族の元へと帰っていく。
自分とはなんの血の繋がりもないというのにご献体さんに親近感が湧いた。
なんとも言えない感情に涙をこらえていたという友人もいるほどで、やはり人間の死には心を動かされるものがある。
毎回解剖開始終了時にご献体さんに黙祷していたのが懐かしい。
医学の根本である人間の構造を理解するために遺体を献上してくださった、ご献体さんとそのご遺族の方に毎回感謝の気持ちを込めて黙祷した。
自分たちのためにしていただいたということを頭に置いておくことで、ご献体さんに敬意を払って取り組めたと思う。
不器用で思うようにいかないことも多かったが、たくさんの学びを得られてよかった。
最後に解剖室の大掃除に参加して床を一所懸命磨くことで感謝の意が伝わればいいなと思っている。
自分なら脳死の際の臓器提供はしたいけれども、献体はしたいとは思わない。
解剖をしている中でご献体さんは生前どんな方だったのだろうか?とか、どうしてご献体してくださったのだろうか?とか様々なことを考えた。
個人情報は公開されないので病気や身体的特徴から想像を膨らませた。
この方のご遺族はもう3年も親の帰りを待っているのかもしれない。
そういうことを考えているとやはり他人事ではなく思えてくる。
ご献体さん一人ひとりに家族がいて、みんなそれぞれの家庭がある。
医学科生としてこういうところまで考えることにも意義があるのだろうと思う。
納棺が終わってご遺族の方がどのようなことをするのかが気になって、いろんな人に話を聞いたり自分で調べたりもして手続きやその後について知ることができた。
遺骨がご遺族の元に帰るまでに献体してから3年かかることもあること、ご献体のの移送費は大学負担であることなどを知った。
他に、火葬は台車式なんだろうか?ロストル式なんだろうか?
火葬後献体でないお骨とどれぐらい違いがあるのだろうか?
解剖させていただいた者としてそういうことも知っておきたいと思った。
解剖の先生がおっしゃっていた通り、解剖実習を終えて大きなステップアップをしたと思う。
人生においてなかなかできないことを体験することで、見方が広がるしいろんなことを考えることができる人になる。
ご献体さんには本当に感謝でいっぱいだ。
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